今回は原浩さんの『火喰鳥を、喰う』をご紹介します。
10月に実写化映画が公開されますね。
あらすじ:始まりは戦死した兵士の日記
久喜雄司、夕里子夫妻は、祖父と母と一緒に信州で暮らしていました。
そんな彼らの元に、戦死した大伯父、久喜貞市の日記が届きます。
この日記は、大伯父が戦時中にニューギニア島で記録していたもの。いわゆる従軍日記です。
それが70年以上もの時を越えて、雄司たちのもとに届けられるのですが、これを機に久喜家で様々な異変が起こります。
失踪、日記に関わった者の狂乱、そして日記の最後の日付に書き足された
「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」の文字、、、
異変に抗う術を探すため、雄司たちは、古くからの知り合い、かつ超常現象に詳しい北斗総一郎に相談するのですが果たして、、、といった内容です。
日記に綴られた過酷な日々
貞市が所属していた部隊は、密林に潜伏し終戦を待っていました。
食糧の確保が困難で常に飢餓状態。
彼らを苦しめるのは食糧問題だけではなく、マラリアにも罹患し、体力のない者から順に命を落としていきます。
そんな中、貞市は、密林でヒクイドリを目撃します。
極度の飢餓状態ですから、そのヒクイドリを何としても捕まえて、食べたい、、
日記には、貞市がヒクイドリに執着する様が描かれています。
一日一日の描写は短いけれど、非常に生々しく、読んでいて目を覆いたくなるほど。
ですが、これは実際に当時起こっていたことで、戦争を経験していないからこそ、目を背けずにきちんと読まなければならないとも思います。
これは怪異?
怪異とは、少なからず他者に対する恨みや悪意などが、あるものだと思います。
でもこの物語で起こる怪異は、そう言うのとはまた違います。
全ての元凶になった日記。そこに込められているのは、一人の兵士の切実なまでに「生きたい」という思いです。
その強すぎる思いが、現代に生きる雄司たちの生活を脅かしているのです。
最後に………
見えない呪いが広がっていく、、読んでいる途中、底知れぬ恐怖がずっとありました。
そして後半は、「本当にこれは現実なのだろうか」と、地に足がついていないような、夢を見ているような、不思議な感覚でした。
読み終わった後、あの展開を回避する方法はあったのだろうかと、考えずにはいられません。
もしこの小説が気になった方は、ぜひ読んでみてくださいね。