今回は遠坂八重さんの『ドールハウスの惨劇』について、お話しします。
みなさんは、つい惹かれるワードってありますか?
この言葉がタイトルにあったら、思わず手にとってしまう、そんなワード。
私にとって、それが「ドールハウス」です。
アンティークな家具や、細かくて美しい装飾。かわいらしい人形たち。
「ドールハウス」から連想されるそういう要素は、どこか神秘的で、ついつい手に取ってしまいます。
そうして惹かれたこの本ですが、内容はとてもシビアでした。
あらすじ
物語の主人公は高校2年生の滝 蓮司。
幼なじみの卯月 麗一とともに学内で便利屋として活動しています。
そしてとある依頼を受けたことがきっかけで、事件が発生するのです。
蓮司たちの通う高校には、一際注目を浴びている双子がいます。
その双子の名前は、藤宮姉妹。
姉の美耶は非の打ち所がない美女で、その美しさは、学内でファンクラブができるほど。
一方、妹の沙耶は、姉のような華やかな顔立ちはしておらず、そのせいで辛い思いをすることもしばしば。しかし沙耶は全国模試で上位ランク一桁をとるほどの秀才です。
美しい美耶と、賢い沙耶。それぞれが美貌と頭脳に秀でているのは、背後に母親の存在があります。
彼女たちは母親によって、異様なほど厳しく管理されています。
美耶に対しては、美しさを保つために、グラム単位で体重を管理させ、着るもの・身につけるものは全て、母親から提供されたもの。それ以外は許されません。
そして沙耶は美耶よりも、もっと過酷です。
授業が始まるまでは、学校の自習室で勉強。授業が終わってからは、予備校に行き、閉館時間まで勉強。友達と遊ぶことはもちろん、少しの寄り道も許されません。そんな異常に厳しい母のもとで、この姉妹は息が詰まる毎日を過ごしていました。
藤宮姉妹の母親は、今でいう毒親です。
確かに、母親にも同情されるべき過去があります。しかしそれにしたって、双子に対する扱いがあまりにも酷い。
特に、2人の誕生日の夜に沙耶にした仕打ち。読んでいるこちらも、怒りで思わず殺意が芽生えてしまうほどでした。
そんな中、彼女たちの住む豪邸で事件が起こるのです。それを便利屋の2人が調査する…といったお話です。
魅力溢れる便利屋コンビ
この本の魅力は何と言っても、便利屋コンビです。
まず、主人公の滝 蓮司。
この子は正義感が強く、とても良い子。
良くも悪くも注目を浴びる藤宮姉妹を、色眼鏡で見たりせず、対等に一人の人間として接しています。蓮司のことを嫌いな人なんていないのでは、というくらい素敵な男子高校生です。
そしてもう一人の便利屋、卯月 麗一は名前の通り見目麗しいのですが、”超”がつくほどの変人です。
ミステリー小説で、探偵役が変人というのはよくある話ですが、私は彼ほどの変人に出会ったことがありません。
どういうところが変なのかというと、例えば彼の私服は体操服です。それも自分の中学のときのではなく、”イケてる苗字”の先輩にもらったものです。
しかも、です。家で着るだけならまだしも、友人たちと街へ遊びに行くときもそれを着てくるのです。彼にとって友人とオシャレして出かけるとなれば、この服なのです。……変わってますよね。
最後に………
便利屋の2人がお互いに足りないピースを補い合いながら、事件を調べていくこのお話。
心苦しいシーンはたくさんありますが、タイトル回収含め、伏線回収もたくさんあって非常に面白い本でした。
興味を持った方は、ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。