今回は今年の9月18日に映画化が予定されている、横溝正史さんの『八つ墓村』をご紹介します。
本作は金田一耕助シリーズの一冊です。
あらすじ
幼い頃に母を亡くした寺田辰弥は、自身の出生のルーツを辿って、母の故郷である八つ墓村を訪れます。
八つ墓村。そこはかつて、凄惨な事件があった村。
――遡ること26年前。
村の分限者である田治見家。当時の主人が自分の妻を含めた村人32名を惨殺。事件後、当主は行方不明となり、事件は未解決で終わりました。
村には家族を殺された者が多く、20数年経った今でも、事件によって抉られた村人たちの心の傷は癒えません。
実は、辰弥はこの田治見家と深く関わり合いのある人物なのです。
そして彼がこの村に足を踏み入れるなり、連続殺人事件が発生して、村は再び恐怖に飲まれます。
八つ墓村の由来:それはかつて村人が犯した罪
この村が「八つ墓村」と呼ばれるのには理由があります。
それは戦国時代のこと。
8人の落武者が三千両の黄金を携えて、この村にたどり着きました。
村人たちは、初めはこの落人たちと暮らしていましたが、彼らを匿っている自分たちの身を案じて、さらに三千両の黄金に目がくらんで、落人を全員殺してしまいます。
それからいうもの、村では不審死が続き、落人の祟りと恐れた村人たちは八つの墓をたて、彼らを供養することにしました。
日本で一番有名な探偵と言っても過言ではない金田一耕助
ミステリを知らない人でも、「金田一耕助」という名前は聞いたことがある人も多いはず。
金田一耕助シリーズは何度も映像化されていますし、誕生から半世紀以上経った今もなお愛されているキャラクターです。
恥ずかしながら、私は推理小説が好きなくせに、一度も金田一耕助シリーズを読んだことがありませんでした。
「こんなに愛されている探偵の魅力を私も味わいたい」
それでこの本を手に取ったわけですが、結論から言うと、この本だけでは、私の場合、彼の魅力を味わうには、少し物足りなさを感じました。
といういのも、彼の出番が思っていたよりも少なく、彼の推理を存分に堪能することができなかったのです。
これは他の作品も読んでみるしかありません、、、
怖いばかりではない八つ墓村
私の勝手なイメージですが、横溝正史さんと言えば「犬神家の一族」のイメージが強く、どこか仄暗くて、おどろおどろしい印象を抱いています。
「八つ墓村」という名前の村、26年前の連続殺人事件、戦国時代の落武者狩り。
こうやって並べてみると、この作品も例外ではありません。
しかし読んでいて意外だと感じたのが、この小説に宝探しの要素があることです。
それが、先に挙げた三千両の黄金です。このありかをめぐる描写がこの物語にはあります。
宝探しなんて、凄惨な事件が起こった村には一番対極にありそうな要素ですよね、、
この物語には、事件の真相を追うというメインテーマと並行して、宝の地図のようなものが登場したりして、冒険小説的な要素も含まれています。
ページを追うごとに変わる登場人物の印象
この小説では多くの登場人物が出てきます。
外から来た辰弥を敵視する人、逆に手を差し伸べてくれる人、田治見家の人々、過去の事件を知る人々。
様々な登場人物の思惑が入り乱れるなかで、
「最初は○○と思っていたけど、実はこうだった」
「この人ってこんな人だったの」
と驚かされる場面が多々あります。
キャラクターの理解が一筋縄ではいかないところも、この小説ならではの魅力です。
最後に………
タイトルからして不穏な八つ墓村。
実際、連続殺人事件が発生したり、過去にも悲惨な事件が起きていたりで、ショッキングな要素も多分にあります。
しかし、三千両の黄金のありかだったり、それぞれのキャラクターの印象が最初と最後で大きく変わったりと、メインの事件とは別に魅力的な要素も多いこの小説。
さらに村人たちの不安と疑惑の混じった視線を一身に浴びつつも、事件の真相、そして田治見家の秘密に迫っていく辰弥の動向にも目が離せません。
500ページ近くある大作ですが、気になる方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。