本日は夕木春央さんの『十戒』をご紹介いたします。
あらすじ:訪れた島で殺人事件
大室里英は伯父が所有していた枝内島を訪れます。
伯父の脩造は、つい先日他界。
枝内島には別荘のほかに複数のバンガローがあり、島全体をリゾート開発する計画が持ち上がります。
里英とその父はリゾート開発の関係者たちを連れ、島へ下見に行くことになりました。
そこで、1泊2日をする予定だったのですが、翌朝、関係者の一人が殺され、島には犯人が残したと思われる「十戒」が残されていて、、、といったお話です。
破ってはいけない十戒。守らなければ島全体が爆発
犯人が残した十戒。これがとても厄介な代物です。
具体的にどのようなことが書かれているか。
「これから三日間、島の外に出てはならない」
「島外に殺人の発生や島の状況を伝えてはならない」
「殺人犯が誰か知ろうとしてはいけない」
これは関係者たちの行動を制限する10の戒律です。
もし守られない場合は、島に仕掛けられた爆弾が爆発し、全員が命を失うことになります。
関係者たちはもともと1泊2日の予定でしたが、島に滞在することを余儀なくされます。
犯人を捜すことよりも犯人の意図を探るミステリ
とにかく読んでいて、犯人の意図が全く予測がつきません。
どうして犯人は十戒なるものを用意して、関係者を島に留めようとするのか
もし関係者が戒律を守らず犯人が起爆させれば、その爆発に犯人自身も巻き込まれるのではないか
そもそもなぜ犯人は殺人を犯したのか
読めば読むほど、次から次へと謎が出てきて、逆に謎が深まっていく一方です。
島には爆弾がありますから、殺人が露呈したくないのであれば、十戒なんて面倒なものは用意せずに、さっさと島ごと爆発させれば良いのです。
しかし犯人はそうしないのです。
そうしない意図とは一体何なのでしょうか、、
制約がある中での捜査
十戒で「殺人犯が誰か知ろうとしてはいけない」と犯人は明記していますから、関係者たちは大っぴらに捜査をするわけにはいきません。
関係者同士で事件についてあれこれ推理するのもNGです。
手がかりを集めてはいけない、推理してはいけない。
ミステリとして、探偵役にこれほど不利な状況があるでしょうか。
捜査できないなんて致命的です。
しかし今作の探偵役は、ただ黙って状況を受けいれるだけではありません。探偵役も負けておらず。あの手この手で手がかりを集め、秘密裏に真実に近づいていきます。
探偵役がどうやって、この危機的状況下で手がかりを探し、物語が展開していくのか、その動向に最後まで目が離せませんでした。
『方舟』を先に読むべき?
結論から言うと、絶対に方舟を先に読まないといけないわけではありません。
十戒単体でも十分に楽しめます。
しかし、方舟を先に読んでいた方が、十戒の面白さを味わい尽くせると思います。
さらに、今年発売された「楽園」について、方舟と十戒両方ともに読んだ人と、十戒しか読んでいない人とでは、「楽園」を読むときの視点も変わってくると思うのです。
楽園はまだ未読ですので、断言はできませんが、、、
方舟も「地下施設から脱出するために、誰か一人を犠牲にしないといけないという絶体絶命な状況で事件が起きる特殊設定ミステリですので、内容が気になる方は、そちらを先に読んでも良いかなと思います。
そして、方舟、十戒を読んだ今、次の楽園がどのような内容になっているのか、これは読まずにはいられません。
最後に………
とにかく作者の工夫が素晴らしい一冊。
現代社会において、クローズドサークルを作るのはなかなか難しいです。スマホがあればどこへでも誰とでも繋がれますから。
それを十戒を用いて、関係者たちを島に閉じ込め、さらに島外の人間にも気を配り、関係者たちが帰らないことを不審に思われないように連絡させることで、作者はクローズドサークルを作り上げています。
さまざまな制約がある中で、事件の解決へと導く様は本当に見事です。
ちょっと変わったミステリが読みたいという方に特におすすめな今作。
ぜひ方舟と合わせて読んでみてはいかがでしょうか。