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荒木あかね『此の世の果ての殺人』:終末の世界で最後の推理

もしも、明日世界が終わるなら、あなたは最後の時間をどのように過ごしますか。

大切な人と過ごす。
思い出の地へ足を運ぶ。
やり残したことに挑戦する。
あるいは、憎い相手に復讐する……

誰しも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

今回紹介する本は、そんな終末の世界のお話です。

目次

あらすじ

「半年後に小惑星が衝突する」、衝突地点は熊本県北東部に位置する阿蘇郡。

世界は大混乱に陥り、皆、避難や、自ら命を絶つ中で、主人公のハルは、自動車教習所に通っています。
ささやかな夢を叶えるために。

彼女の運転を助手席で見守るのは、教官で元警察官のイサガワ。

ある日、いつものように練習しようとしたら、トランクの中に、女性の死体を発見します。それは明らかに他殺体でした。

世界が終ろうとしているときに、誰が、一体何のために、殺人を犯したのか。この死体は一体誰なのか。

ハルとイサガワ先生は、些細な情報を頼りに、捜査を始めるのですが、実は他の場所でも似たような他殺体が発見されて、、、

もうすぐ世界が終わるという状況

小惑星の衝突地点は日本ですから、皆日本から脱出しようとします。そのため、ハルの暮らしている地域では、ほとんど人がいません。

街は荒廃し、道端に死体が転がっている、という状況も珍しくはないのです。

そのような状況下で、まるで隠すように、教習車のトランクから死体が発見されます。

どうしてわざわざ、死体を隠したのか、、
誰かに見つかったところで、この、世界が終わるという時に、わざわざ犯人を捕まえようなんて人はいません。そもそも街に残っている人自体、少ないのですから。

この不可解な死体の前で、正義感の強いイサガワ先生と、成り行きで捜査に参加することになったハルは、人生最後の謎解きをするのです。

この本の注目すべきポイント

「作者は終末の世界を見てきたのではないか」というくらい、この物語の小惑星衝突発表後の人々の混乱・社会の動きがリアルです。

例えば、富裕層が地球脱出計画を立てたり、衝突の衝撃波から逃れるシェルターを作ったりなど。

また、物語の中では、避難できずにその場にとどまっている住人たちでコミュニティを作っているのですが、それも実際「ありそう」と思いました。

小惑星衝突って、実際にない話ではないと思います。だから、もし私たちが生きている世界で、小惑星衝突が実際に起ころうとしているなら、こんな未来が待っている。

そう考えると読んでいて、恐ろしくなりました。

最後に……

事件を解決したところで、世界が終わるという結末は変わりません。
それなら、捜査をすることに一体何の意味があるのか。

主人公たちを事件解決へと駆り立てるのは、彼女たちの正義感です。
そのひた向きさに、読んでいるこちらも応援したくなりました。

切なくて美しいラストを、ぜひその目で確かめてください。

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この記事を書いた人

どこにでもいる、ただの読書好き。

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